ゲンゴロウと聞くと、どんな昆虫を思い浮かべますか?水辺に住む大きくて緑色の甲虫で、強力なアゴで獲物を捕食する肉食性の昆虫です。しかし、ゲンゴロウは一種類だけではありません。日本には約140種ものゲンゴロウが生息しており、その中でも最も大型で有名なのが「ゲンゴロウ」(別名 ナミゲンゴロウ、タダゲンゴロウ、オオゲンゴロウ)です。今回は、この「ゲンゴロウ」について、その生態や特徴、飼い方などを紹介します。
「ゲンゴロウ」の生態と特徴
「ゲンゴロウ」は、北海道から九州まで広く分布していますが、南西諸島には生息していません。体長は34~42mmで、背面は緑色か暗褐色で光沢があります。側縁部は黄色になっており、上翅には3条の点刻列(点線)があります。オスはメスよりも光沢が強く、前脚に吸盤状の器官を持ちます。これはメスの背中に付着して交尾するためのものです。
「ゲンゴロウ」は水中で呼吸するために、腹部末端にある気門から空気を取り込みます。気門は水面に露出させることで空気を更新しますが、水中では気泡を形成しており、これが酸素を供給する役割を果たします。この気泡は銀色に見えるため、「銀玉」と呼ばれることもあります。
「ゲンゴロウ」は肉食性で、腐肉や弱った魚類や動きの鈍い昆虫などを捕食します。特に幼虫は完全な肉食性で、トンボの幼虫やマツモムシなどの水生昆虫を捕食します。幼虫は80mmにもなる大型で、鋭い大アゴを持ちます。その凶暴性から、「田ムカデ」と呼ばれることもあります。
「ゲンゴロウ」の繁殖と発生
「ゲンゴロウ」は5~7月に水田や池の岸辺の抽水植物の茎の中に産卵します。孵化した幼虫は1ヵ月から1ヵ月半で3回の脱皮を経て急激に成長します。岸辺の土中で繭(マユ)を作りそこで蛹(サナギ)になり、その2、3週間後に成虫になります。「ゲンゴロウ」の寿命は2~3年とされています。
「ゲンゴロウ」の飼い方
「ゲンゴロウ」を飼う場合は、水槽やプラスチック容器などを用意します。水槽の大きさは30cm×30cm×30cm以上が望ましく、水深は10cm程度です。底砂や水草などを入れて自然に近い環境を作ります。「ゲンゴロウ」は水中で呼吸するために水面に出る必要があるので、水面から容器の上部までは5cm以上空けておきます。また、水質が悪化しないように定期的に換水します。
エサとしては、メダカやオタマジャクシなどの小型魚類や両生類、またはコオロギやミールワームなどの昆虫類を与えます。「ゲンゴロウ」は肉食性なのでエサを与えすぎると水質が悪化する可能性があるので注意しましょう。「ゲンゴロウ」は温度変化に強いですが、冬場は10℃以下にならないように保温しましょう。
「ゲンゴロウ」の現状と保護
「ゲンゴロウ」はかつて日本各地で普通に見られる昆虫でしたが、近年ではその個体数が激減しています。その原因としては、水田への残留性農薬の散布、水田耕作の放棄、それに伴う溜め池や沼の埋め立て、愛好家による乱獲、外来魚による捕食などが挙げられます。「ゲンコロウ」は日本固有種ではありませんが、「日本の水田文化」と密接な関係がある昆虫です。そのため、「日本産野生動植物種」として国際的な保護対象とされています。